2014年9月18日木曜日

進まぬ中国の環境汚染対策(1):問題は「責任の不在」、「ここは人間が生きていく場所なのか?」

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ロイター 2014年 09月 18日 15:22 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKBN0HD0I020140918

焦点:進まぬ中国の土壌汚染対策、問題は「責任の不在」


● 9月17日、中国の北京市郊外にある大規模な国営製鉄所が、大気汚染対策のために閉鎖されてから約4年が経過したが、製鉄所跡地の土壌の除染は、ほとんど手付かずのままとなっている。写真は河南省の工場から流出した廃液。15日撮影(2014年 ロイター)

[北京 17日 ロイター] -
 中国の北京市郊外にある大規模な国営製鉄所が、大気汚染対策のために閉鎖されてから約4年が経過した。
 しかし、製鉄所跡地の土壌の除染は、ほとんど手付かずのままとなっている。

 同製鉄所はかつて年間粗鋼生産量800万トンを誇ったが、今目につくのは、さびついた配管や線路、使われなくなった煙突などだ。
 中国第5位の鉄鋼メーカー首鋼集団が所有していた同製鉄所には、95年の歴史があった。
 しかしその跡地は、中国国内に数多くある産業廃棄物や農業廃棄物で土壌が汚染された場所の1つとなっている。

 除染に向けた活動を阻害しているのは、誰がその費用を負担するのかという問題だ。
 土地所有者である国なのか、製鉄所を所有していた企業なのか。土壌処理会社の伊世特中国(ESDチャイナ)によると、総面積8.6平方キロに及ぶ跡地の除染には、 
 推計50億元(約886億円)がかかるという。

 環境問題の専門家の頭を悩ませているのは、もし公害に対する政治的関心が高い
 北京でさえ土壌汚染対策に苦労するなら、貧しい地方の農地除染はさらに難しい
ということだ。

 ESDチャイナのマネージングディレクター、Gong Yuyang氏は
 「本当の問題は、首鋼集団などの会社にとって、跡地の除染に多額の資金を投じるインセンティブがないことだ」
と語った。

 首鋼集団はこの件に関してコメントを差し控えている。

 中国環境保護省が4月に公表した調査結果によると、各地の農地で採取した土壌サンプルの19.3%から、基準値を超える重金属や化学廃棄物が検出された。
 湖南省では、稲耕作地の実に4分の3以上が汚染されていたことが分かったという。

 中国ではすでに、330万ヘクタールの農地が汚染によって無期限使用禁止となっている。
 ロイターの試算では、これをすべて耕作や畜産に適した土壌に改良するには、
 約5兆元(約88兆円)のコストが必要
なる。

 中国環境保護省は、鉱山廃石や化学廃棄物の処理は企業に責任があると指摘する。
 しかし一方で、廃水のかんがい利用や殺虫剤や肥料の過剰利用も汚染の原因だとしている。

 ESDのGong氏は
 「誰の責任か決めるのは難しく、政府は農家には費用を負担させないだろう」
と語る。

<汚染者負担は適用されず>

 環境汚染に対する国民の不満拡大を受け、中国政府は今年3月、本格的な公害対策に乗り出した。
 最優先の課題は、汚染された穀物が食品流通網に入り込むリスクを減らすことだ。

 政府は現在、土壌汚染の責任が誰にあるのかを国が決められる法案を作成している。
 また除染活動に融資する新たな仕組みも検討されているという。
 しかし、国営メディアの報道によれば、専門家らはこうした法案が成立するのは、早くても2017年以降になるとみている。

 今のところ、企業側が行動を起こす経済的インセンティブはほとんどない。

 環境保護団体グリーンピース北京支部のWu Yixiu氏は
 「この問題で市場主導型の取り組みはない。
 中国では『汚染者負担』の原則は話し合われておらず、政策課題にも取り上げられていない」
と指摘。
 「重金属汚染の浄化ビジネスでは、いまだに政府が主たる支払い者だ」
と語った。

 最終的な責任の所在も曖昧だ。
 「現在大きな議論になっているのは、
 大企業は国有企業であり、彼らが土壌を汚染した時に関する法律がないことだ」
と前出のGong氏は話す。

 中国政府が支援する研究機関の予測では、土壌浄化ビジネスはまだごく初期段階にあるものの、2025年までには年間2000億元の市場規模になる可能性があるという。

 環境保護省生態保護局の庄国泰局長は、最近開催された会合で「土壌改善の市場はまだ非常に小さい」とした上で、向こう40年以内に数兆元の市場になるとの暫定的な試算もあると述べた。

 ロイターはこの件で環境保護省にコメントを求めたが、今のところ回答は得られていない。

<汚染を見て見ぬふり>

 首鋼集団は製鉄所跡地を歴史遺産にしたり、一部土地を不動産用地に転用したりする計画を持っていたが、約1世紀にわたる操業で蓄積された汚染の度合いを精査するため、実行は遅れているという。

 一般公開されている調査結果によると、2011年に跡地で採取されたサンプルからは、基準値を超えるカドミウム、クロム、鉛が検出された。
 ただ、完全な除染計画はまだ出来上がっていないという。

 ESDのGong氏は
 「首鋼集団は利益第一であり、政府が主導しない限りは何も始まらない
と語っている。

 匿名を条件に取材に応じた別の土壌処理会社の幹部によると、問題があまりに大きいため、多くの地方当局は汚染を見て見ぬふりをするか、身動きが取れなくなっているという。

 一部の地域では、応急処置が導入されている。安徽省の鉛生産地では、農家が精錬所から半径100メートル以内で耕作するのを防ぐため、汚染が深刻な場所には植樹が行われている。
 ただ現地住民の話では、農業は続いているという。

 またグリーンピースのWu氏によれば、湖南省でも汚染された農地でのコメ生産は続けられている。

 同氏は
 「政府は農業を禁止していない。なぜなら、いったん禁止プロセスを始めてしまえば、コメの総生産量が脅かされるからだ」
と語った。

(原文:David Stanway、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)




ウオールストリートジャーナル 原文(英語) 2014 年 9 月 17 日 12:31 JST
http://jp.wsj.com/news/articles/SB12785023003277603623104580158982821827468?mod=JWSJ_EditorsPicks

中国最悪の汚染都市、最大の汚染企業を見に行く


●地元経済を石炭に依存している邢台市のスモッグは深刻だ China Daily/Reuters

 【邢台市(中国河北省)】これが中国で最悪の汚染都市の最大の汚染者だ。

 中国の冀中能源はこの灰色の産業センターで6つの大規模炭鉱を持ち、数十の関連施設を運営している。
 政府データによると、この産業センターの大気汚染は中国で最悪だ。
 同社の施設のうちの5つは全国の上位大気汚染物質排出リストに載っており、八つは邢台市政府のリストに掲載されていて、その数は他のどんな企業よりも多い。

 冀中は今、自らをクリーンにしようとしている。
 これは中国全土で地方政府と企業が経済を破綻させることなく、ひどい汚染に取り組もうとする中で採用されている、綱渡り的な動きを反映したものだ。

 中国政府は、大気や土壌、水の汚染に対処すべきだとの急激に台頭する中間層からの高まる圧力にさらされている。
 李克強首相は今年3月、汚染への「宣戦」を布告した。
 同国環境保護省によると、
 この闘いには1兆5000億人民元(26兆8000億円)、
 2010年の国内総生産(GDP)の3.5%が必要になるという。

 世界銀行は、大気汚染はがんなど肺疾患の高い罹患率につながり、中国での汚染と資源枯渇のコストは09年の国民総所得の9%になるとしている。

 冀中は政府の命令で、同市の火力発電所5基のうち3基について閉鎖、あるいは閉鎖を計画しており、4基目の運転を停止してクリーンな設備に代える計画だ。
 同社は、石炭需要が減少する中で、有害物質の排出を減らすために数億ドルの資金を投じている。


●邢台市は北京の南に位置

 邢台市の760万の住民の一部はこうした動きを称賛している。
 しかし、他の人たち―特に同社で働く人たち―は複雑だ。
 一部の従業員の賃金は同社の利益とともに減少し、多くの人は自分たちの職場と石炭を基盤にした市経済が打撃を受ける可能性があると不安を抱いている。

 同社の石炭工場での勤務時間が短縮されたというShi Yangさん(25)は「月給は50%減った」と話している。
 同社の炭鉱の外で話を聞いた従業員たちは、給料の遅配があったり、要求しなければ出さない場合があると言っている。

 同社は6月、Shiさんが住む村の小規模発電所を閉鎖した。
 この村にある炭鉱は大量のちりを出しており、同社は村の道路沿いにスプリンクラーを設置して定期的に噴出させてちりを除去しなければならないほどだという。

 冀中からのコメントは得られていない。

 同社は邢台市を中心に約5万0800人を雇用している。
 邢台市はまた、高速鉄道の駅、欧米系の大規模ホテル、鉄鋼、セメント、ガラス、化学品を生産する100以上の工場があることを自慢にしている。

 冀中最大の子会社は昨年、税金として市に11億元以上を支払った。
 この額は納税額2位以下7つの納税者を合わせたよりも多い。
 冀中の発電所はあちこちに点在していて、大煙突や冷却塔などが地平線のかなたから見える。
 その赤と黄色のロゴは屋外広告板から道路をがたがたと走り回るトラックの横腹まで、至る所で目に入る。


●邢台市のある河北省は汚染物質排出のデータをオンライン化 AFP/Getty Images

 環境への被害も目に付く。
 冀中の炭鉱、発電所、石炭処理工場につながる道路はほこりとすすに覆われ、大型の石炭運搬トラックはがれきをはね飛ばして走っている。
 多くの同社施設の外には農地になっていて、農家はここでリンゴやピーナツ、トウモロコシを栽培して現地の市場で売っているが、一部の農家はすすのために作物が売れないと言っている。

 邢台の発電所のすぐそばに住むYang Hexiaoさん(67)は「私の服は灰で汚れている。屋根で乾燥させている穀物も灰に覆われている」と話した。

 地方当局者は過去に2回にわたり、同社の汚染物質排出は基準を超え、標準以下の石炭を使っていると指摘した。
 政府のデータによれば、邢台市の大気汚染モニターでは、同社の発電所から出る有毒な二酸化硫黄ガスは中国の基準の4倍以上だった。
 同市の過去12カ月の平均的なPM2.5(微小粒子物質)レベルは1立方メートル当たり150マイクログラムで、中国の基準の4倍以上だった。

 これとは対照的に、昨年、米国で最悪の大気汚染地とされたカリフォルニア州フレスコのPM2.5のレベルは18マイクログラムにすぎない。

 邢台市は昨年10月、環境保護違反を報告する住民に最大1万元の現金褒賞を与える活動を始めた。
 現地の環境局の大気汚染部門の責任者は「この市はPM2.5を年間4%ずつ減らしているが、目で見る限りでは分からないだろう」と話した。
 同市は大気・水質汚染について、16の施設―うち半分は冀中のもの―をモニターしている。
 同市のある河北省やその他の一部の省は昨年、中国政府の催促で、汚染物質排出のデータをオンライン化し、その出どころを個々の煙突や排出口に特定することができるようになった。

 一部の企業はこうした動きを押し返している。
 中国環境保護省は今年、見つからないように夜間に汚染物質を排出していると言われた邢台市の非公開企業キングボード・ケミカル・ホールディングズを査察しようとした。
 同省のウェブサイトによると、査察チームは石炭処理工場に入ろうとしたが、同社の警備員によって阻止されたという。

 同社の広報担当者は、同工場は適正な操業をしているとし、また工場内には最近、環境保護のための研究・開発(R&D)センターが設けられたと述べた。
 この担当者は、査察チームの一件については述べなかった。

 しかし冀中は規則に従っている。
 同社は2008、09年に全ての発電所に脱硫装置を付け、排出基準が全国的に強化される中で、数年おきに装置の能力を高めている。
 大気汚染テストに3発電所が落ちた時、邢台市は二つを16年末までに閉鎖するよう命じた。
 もう一つは既に今年6月に閉鎖された。

 現地の経済紙が同社関係者の話として報じたところによると、冀中は過去数年間に工場の設備強化など、汚染改善や省エネのためのさまざまな施策に3億5800万元を投じた。同社は7月に出した声明で、環境問題は同社のビジネスのやり方を再考させたとし、「安定した健全な発展を達成するために」品質と効率を重視するようになったと述べた。

 ただ、こうした変化は、特に中国経済の減速で石炭価格が下落する中で、同社に打撃を与えている。
 今年上半期は売上高が前年同期比26%減少し、利益は93%急減して5270万元にとどまった。



レコードチャイナ 配信日時:2014年9月17日 20時28分
http://www.recordchina.co.jp/a94311.html

汚水の垂れ流しで水質悪化、白く濁った「ミルク川」に―浙江省紹興市


●16日、中国浙江省紹興市の野菜市場の付近にある川がミルク色に濁り、注目を集めている。

 2014年9月16日、中国浙江省紹興市の野菜市場の付近にある川がミルク色に濁り、注目を集めている。
 チャイナフォトプレスが伝えた。
市場のごみ捨て場の汚水が直接川に流れ込み、水質を著しく悪化させている。川の水は変色し、異臭を放っている。



レコードチャイナ 配信日時:2014年9月23日 6時20分
http://www.recordchina.co.jp/a94557.html

汚染野菜が食卓へ=中国の深刻な土壌汚染、問題解決へ道のり険しく―米メディア


●21日、急速な経済発展の代償として、中国で深刻な土壌汚染により耕作地などに重大な被害が発生している。写真は重金属汚染が深刻な広東省汕頭市潮陽区の貴嶼鎮。

2014年9月21日、米国際ラジオ放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)中国語サイトによると、
 急速な経済発展の代償として、
 中国で深刻な土壌汚染により耕作地などに重大な被害が発生
している。

 中国では経済発展と都市化により耕作地が減少している上、深刻な土壌汚染が耕作地不足に拍車をかけている。
 中国では耕作地の約5分の1が重金属や有害な化学物質によって汚染されているとされ、汚染された穀物や野菜が食卓に上るようになっている。

 中国政府も土壌汚染の深刻さを認識してはいるものの、問題解決への道のりは険しいと専門家は話す。
 中国政府には有害な廃棄物や化学物質の生産・使用を追跡、報告させるシステムが存在せず、汚染に関するデータも不足している。
 また、中国環境保護部が全国調査を行ったことはあるものの、その結果は国家機密に指定されており、汚染の実態や問題解決の障害がどこにあるかも明らかにされていない。



サーチナニュース 2014-10-21 05:53
http://news.searchina.net/id/1546462

中国の大気汚染 「藁焼き問題」の対応を唱える専門家=中国メディア

 深刻な大気汚染が問題となっている中国でこのほど開催された環境関連フォーラムにおいて、専門家が
 「わが国のスモッグは2030年まで続く可能性がある」
との予測を示した。中国メディア・楚天金報が19日報じた。

 記事は、湖北省武漢市で18日に開かれた第4回「中達環境法フォーラム」で、中南財経政法大学の高利紅教授が
 「わが国のスモッグは2030年まで続く可能性がある。
 わが国では30年前後に工業化が実現すると予測されており、
 その過程に伴ってスモッグもピークに達する。
 その後は、徐々に減ることになるだろう」
と語ったことを伝えた。

  また、今の時期がちょうど稲の収穫を終えた「藁(わら)焼き」のピークに当たり、各地で新たに大気汚染が発生していることについて、中国地質大学の専門家が
 「全国で100近い関連する法律が施行されているものの、藁焼きの問題が抑えられていない」
と説明したことを紹介。
 藁を粉砕して田畑にかえす、建築材料や飼料、バイオ発電の原料にするなどの方法を奨励する“バイオ補償制度”の構築を提案し、
 「焼却をやめた農民に報奨、手当て、減税などの補償を与えるとともに、新エネルギー産業の体制を整えれば、ゴミが宝となり一挙両得だ」
と語ったことを伝えた。


 「今の状態が続き、2030年にピークとなる」
 とすると、それまで中国人民は健康に生存できるのだろうか。
 あと15年、中国人民は環境の苦しみにさらされながら生きて行かねばならないことになる。
 なんか変な論理である。
 共産党の手抜き環境対策を擁護している
としか思えないのだが。
 論旨を「藁焼きの問題」にすり替えているように思える。


レコードチャイナ 配信日時:2014年10月21日 6時0分
http://www.recordchina.co.jp/a96038.html

大気汚染深刻な北京、
フランスが「スモッグ防止学校」新設へ
=きれいな空気の中で勉学できる―中国メディア

2014年10月20日、参考消息網によると、大気汚染が深刻化する中国北京市でこのほど、フランス政府が「スモッグ防止学校」を設立する方針を示した。
 大気汚染が原因で授業中止や生徒の遅刻が増加したため。

 中国をこのほど訪問したフランスの外相が明らかにしたもの。
 仏メディアによると、すでに「スモッグ防止学校」は建設計画がスタートして1年以上になる。
 現在北京にあるフランスのインターナショナル・スクールは、大気汚染のあまりのひどさに授業の中止や生徒の遅刻が増加。
 学校側が生徒に「登校する必要はない」と伝えることすらあるという。

 「スモッグ防止学校」は空気清浄設備を備えた室内体育館も併設。
 生徒たちがきれいな空気の中で、勉強や運動に励めるよう設計されている。




●20日、参考消息網によると、大気汚染が深刻化する中国北京市でこのほど、フランス政府が「スモッグ防止学校」を設立する方針を示した。写真はスモッグの中行われた北京マラソン。



【描けない未来:中国の苦悩】



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