2014年9月22日月曜日

共産党独裁と人民民主主義:「民意が離反している」との危機感のあらわれ

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●習近平国家主席は手にした権力を正しく使えるか〔AFPBB News〕



2014.09.22(月)  The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41769

昇竜の勢いの習近平:中国を支配する男
(英エコノミスト誌 2014年9月20日号)

過去数十年で最大の権力と人気を誇る中国の指導者は、その強みを賢く活用しなければならない。

 カリスマ的独裁者、毛沢東による支配の下で解き放たれた狂気は、中国にあまりにも大きな傷を残した。
 そのため、毛沢東亡きあとの後継者たちは、あれほどの支配力を1人の人間の手に握らせることは二度とすまいと誓った。

 1970年代後半に実権を握った鄧小平は、「集団指導」という概念を高く評価した。
 共産党総書記が責任を複数の指導者に分け与え、その総意により重大な決断を下すという考え方だ。
 これは時に無視されることがあり、鄧小平自身も、危機に際しては独裁者として振る舞った。

 だが、この集団指導体制というあり方は、毛沢東独裁による混乱後に中国が安定を取り戻すのに役立った。

 現在の中国の最高権力者、習近平国家主席は、その集団指導体制を破棄しつつある。
 習主席は間違いなく、鄧小平以来最も強力な中国の支配者になっている。
 毛沢東以来かもしれない。
 それが中国にとって良いことか悪いことかは、習主席が権力をどう行使するかにかかっている。

 毛沢東は、中国を社会的にも経済的にも崩壊寸前まで追い込んだ。
 鄧小平は、経済面では正しい方向に舵を切ったが、政治面では改革の機会を逸した。
 習主席が自らの権力を活用して中国における権力のあり方を改革すれば、中国に多大な利益をもたらすことになるだろう。
 これまでの習主席の行動から見る限りでは、まだどちらとも言えない。

■党を背負う

 集団を犠牲にして習主席を単独の権力者に押し上げるという決断自体が、
 集団的に下されたものだった可能性は十二分にある。
 中国の一部には、絶対的指導者を切望する声がある。
 腐敗を一掃し、広がる格差を是正し、世界での確固たる立場を築ける政治家が求められていた(最後の仕事については、習主席は楽しそうに取り組んでいる)。

 また、国外の実業家の多くも、肥大化した国有企業による独占状態を打ち砕き、経済改革に対する長年の躊躇を打破する指導者を求めていた。

 その決断がどのように下されたにせよ、習主席は権力を握り、それを徹底的に活用した。
 行政改革を担う秘密委員会を支配下に収め、軍、財政、サイバーセキュリティを全面的に見直している。

 習主席の汚職撲滅キャンペーンは、過去数十年で最大規模のものだ。
 人民解放軍のナンバー2(中央軍事委員会副主席)を陥れ、中国の巨大な治安部門の元トップも標的とした――毛沢東政権以来、汚職捜査の対象になった政府高官としては最高位の幹部だ。
 軍幹部は賢明にも習主席に服従している。
 今年になってから、中国国営の新聞に、習主席への忠誠を誓う軍司令官たちの声明が相次いで発表された。

 習主席は中国の指導者として初めて、大がかりなチームを組織して一般向けのイメージを作り上げた。
 だが、習主席自身もイメージ戦略の素質を持っている。
 身長(高さを重視する中国において、習主席の背丈は毛沢東を除くすべての前任者を上回っている)と、強靭さと、親しみやすさを持ち合わせているのだ。

 大衆に混じって肉まんを食べているかと思えば、国家主席専用リムジンではなくマイクロバスに乗る姿を見せる。
 習主席はいまや、毛沢東以来最も人気のある指導者になっている。

 こうしたすべては、習主席に課された2つの使命の遂行を後押しする。
1]. 1つ目の目標は、不安を抑えるに足るペースでの経済成長を維持しつつ、不動産投資とインフラ投資への過度の依存から脱却することだ。
 これらに依存しすぎていると、経済が負債にあえぐことになりかねない。

 習主席は2013年11月、市場の力が重要な役割を果たすことになると明言し(鄧小平でさえ、それを口に出す勇気はなかった)、この目標に向け有望なスタートを切った。
 それ以降、いくつかの心強い動きが見られる。

 例えば、これまでは国有企業が独占していた分野で民間企業の権利を拡大したり、地方政府が所有する企業の株式を民間の投資家へ売却したりしている。
 習主席はまた、戸籍制度の改革にも乗り出している。
 毛沢東時代の遺産である戸籍制度は、農村部から都市部への恒久的な移住を難しくしている要因だ。
 鄧小平時代の遺産で、広く弊害をもたらしている一人っ子政策の緩和にも着手した。

■さらなる施策が必要

 習主席の経済政策により、成長の急激な減速に歯止めをかけられるかどうかは、まだ全く分からない。
 最新の統計では、中国経済は政府の思惑よりも急速に冷え込んでいることが示唆される。
 状況を大きく左右するのは、習主席がさらに難しい2つ目の使命をどこまで遂行できるのかという点だろう。

2]. 2つ目の使命とは、法の支配の確立だ。
 法の支配は間違いなく、10月に開催される中国共産党中央委員会の年次会議での中心的な議題となる。
 問題は、あらゆる者に公平に法を適用する覚悟が、習主席にあるかどうかだ。

 腐敗取り締まりにおける習主席の力の入れ方を見る限りでは、その答えは「条件付きのノー」だ。

 今回の腐敗撲滅キャンペーンには、
 組織の無視という毛沢東主義的な特徴がある。
 役人たちに恐怖を植えつけるのには成功しているが、
 汚職の原因にはほとんど切り込んでいない。
 汚職の原因は、
1].党自体が完全に支配する捜査の仕組みと、
2].しばしば忠誠心が誠実さよりも重視される非公開の公職任命制度と、
3].不正行為の批判を封じ込める自由な言論の抑圧
にある。

 習主席に求められるのは、腐敗を取り締まる独立機関を設立することだ。
 取り締まりを党の捜査担当者と、彼らの属する反目し合う派閥に委ねるのでは意味がない。
 また、政府高官に対して、すべての収入源や不動産などの資産の公開を義務づける必要もある。

 ところが習主席は、腐敗の取り締まりに劣らず精力的に、そうした変革を求める活動家を検挙している。
 法制度改革が伴わなければ、習主席は古いタイプの指導者――犯罪者と闘うという名目で復讐をする指導者――になってしまう恐れがある。
 それは2つの結果を招くことになる。
★.新たな腐敗の潮流が生まれ、
★.党のエリート層の怒りが、ある時点で爆発する。

 いくつかの点では、習主席は正しい発言をしている。
 例えば、「権力を檻に封じ込める」ために裁判所の助力を得たいと語っている。地方裁判所に対する地方政府の影響力を小さくする改革も進められている。

 だが、さらに踏み込んで、機密の絡む事件の裁定権を持つ、共産党の不透明な「政法委員会」を廃止しなければならない。
 共産党は、裁判官の(もっと言えば立法者の)選任に干渉するのをやめるべきだ。

 こうした改革を断行すれば、極めて大きな効果が得られるだろう。
 権力の独占を緩和し、チェック・アンド・バランスを受け入れ始める意思が党にあることを示すことになる。
 鄧小平はかつて、経済改革は、政治改革を伴わなければ失敗すると語った。
 習主席は8月に、腰の重い役人に対して、「果敢に改革を断行する」よう求めた。

 中国の指導者は、自らの言葉を、そして鄧小平の言葉を心に留めておくべきだ。
 その絶大な権力を、最善の結果が得られるように行使し、体制の変革に努めなければならない。

© 2014 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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サーチナニュース 2014-09-21 23:23
http://news.searchina.net/id/1543886

習近平
「全社会の願いと要求の最大公約数を探しあてることが、人民民主の最重要点だ」=中国

 中国共産党の習近平総書記(国家主席、中央軍事委員会主席)は21日、北京市内で開催された中国人民政治協商会議の成立65周年大会で演説し、
 「人民政治協商会議は人民民主主義の重要な形式だ」、
 「全社会の願いと要求の最大公約数を探しあてることが、人民民主の最重要点だ」
などと述べた。
 中国新聞社などが報じた。

  中国共産党は国民党との抗争期、「打倒蒋介石」の目的を共有できる政党との協力体制を構築した。
 いわゆる「統一戦線」だ。
 統一戦線の制度化として発足したのが中国人民政治協商会議で、統一戦線に参加した8政党や各団体、各界の代表で構成される。
 なお、中国語の「協商」は協議の意だ。 

 中国人民政治協商会議は1949年9月21日に北京(当時は北平)で第1回大会を開き、臨時憲法「中国人民政治協商会議共同綱領」の採択、中央人民政府主席に毛沢東を選出、北平を北京と改名して首都に定めるなどを決めた。
 同決定を受け、毛沢東が同年10月1日に中華人民共和国の成立を宣言した。
  その後、全国人民代表大会(全人代)が「国家」の最高権力機関とされた。
 政治協商会議は政治における「提言機関」となり、政治的影響力は相対的に低下した。
 さらに、「共産党が政府を指導」と定められたため、中国の政治は実際には共産党上層部の意向で決まるようになった。
 全人代が長期間にわたり機能しない事態も発生した。
 改革開放の本格化した1990年代以降、政治協商会議は「統一戦線」という性格から比較的早くから財界(民間の大企業経営者)を受け入れたため、実質的地位は再びやや向上した。
  習近平共産党総書記は21日の大会で、
 「政治協商会議は、国家統治の体系と統治能力の現代化の要求に適応せねばならない。
 改革と刷新の精神を堅持し、
 人民政治協商の理論を刷新、制度の刷新、作業の刷新、民主形式を豊富にすること、
 民衆のパイプの通りをよくすることをせねばならない」
などと表明。
 中国の体制については「社会主義協議民主」と表現し、
 中国の体制は
 「社会主義民主政治の特有の形式と独特な優位さ」であり
 「共産党の大衆路線の政治分野における重要な具現化」を持つ
と主張した。
  さらに、中国の現状を
 「社会主義制度のもとで、問題があれば相談する
 。多くの人に関係することは多くの人で相談する」
と説明し、
 「全社会の願いと要求の最大公約数を探しあてることが、人民民主の最重要点だ」
と論じた。

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◆解説◆
  中国などで採用されている「人民民主主義」は、いわゆる西側国家の「議会制民主主義」とは異なる。
★.議会制民主主義の場合には、国会議員や国のすぐ下に位置する地方自治体の首長など、かなり広範囲にわたって普通選挙が実施される。
 国家元首が全国選挙で選ばれる場合もある(大統領制。米国など)。
 政権党(与党)を反対党(野党)が公然と批判することも、広く認められている。
 選挙結果の結果では、与党が下野し、それまでの野党が与党になる場合もある。
★.人民民主主義では、政権党が政権を掌握していることが国家体制の大原則とされる。
 それ以外の政党の存在が認められる場合もあるが、「野党」としてではなく、政権党に協力する「衛星党」としての存在であり、政権交代は想定されていない。
 「普通選挙」が行われても、形式的である場合がほとんどだ。
 人民民主主義の場合、政権党が有能であり、良心的であれば、政治的目標を迅速かつ強力に実現できる場合がある。
 中国で1990年代に本格化した開放改革がよい例だ。
 さまざまな深刻なひずみを発生させることにはなったが、「とにかく経済を成長させねば、国がもたない」という切迫した状況は打開することができた。
 逆に、政権党の問題が、是正されにくいという欠陥も否定できない。
 政権党が絶対的に権力を握っているため、政権党の問題がそのまま国家全体の大きな問題になる。

 人民民主主義の体制が持つ問題は、議会制民主主義の国とは異なり、
 「野党との対決があり、問題があればいやが応でも自己改革せねば、政党として存続も危うくなる」
との“物理的に切迫した状況”が出現しにくいために発生しやすいと解釈できる。
 総じて言えば、
★.議会制民主主義は、政権党あるいは政権担当者に対する「性悪説」が根底にあり、
★.人民民主主義は「性善説」が根底にある体制
と分析できる。
  現在、統一戦線を構築した上での人民民主主義を採用している国としては中国、北朝鮮、ラオスがある。
 シリアも、社会主義ではないが、形式的に同様の体制をとっている。

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 習近平総書記の演説は、中国共産党の綱領からは、微妙にずれている部分がある
 共産党などのいわゆる「革命政党」はもともと、自らこそが新たな社会を切り開く「前衛勢力」と意識することが多かった。
 「自らの信念は完全に正しいが、それを理解しない人々がいる。
 旧体制で利益を得てきた勢力も多い」
との考えだ。
 そのため、大衆に対する宣伝活動に力を入れ、
 「社会に残る敵を打倒する」
ことに力を入れた。
 中国共産党の現行の綱領の冒頭にも
 「中国共産党は中国プロレタリアートの先鋒隊(前衛部隊)であり、同時に中国人民の先鋒隊である」
と、自らが「前衛勢力」であると強く意識する表現が並べられている。
 習総書記は21日の演説で、
 「全社会の願いと要求の最大公約数を探しあてることが、人民民主の最重要点だ」
と述べており、
 「前衛としての意識や使命感」はみられない。
 共産党として「とにかく、民意を尊重」
との考え方を強調したとも、
 「民意が離反している」との危機感のあらわれとも解釈できる。



サーチナニュース 2014-09-29 11:09
http://news.searchina.net/id/1544539?page=1

中国政府・共産党「以下の場所での会議開催を禁止」
・・・全国の人気観光地21カ所がズラリ

 中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁は28日、共産党及び政府機関が観光地で会議を開催することを禁止する通達を出した。
 「一律禁止」と指定された場所には、中国を代表する観光地21カ所がずらりと並んだ。
  会議開催が禁止されたのは、
八達嶺-十三陵、
承德避暑山荘外八廟、
五台山、
太湖、
普陀山、
黄山、
九華山、
武夷山、
廬山、
泰山、
嵩山、
武当山、
武陵源(張家界)、
白雲山、
桂林漓江、
三亜熱帯海浜、
峨眉山-楽山大仏、
九寨溝-黃龍、
黃果樹、
シーサンパンナ(西双版納)、
華山
 の21カ所で、いずれも中国を代表する観光地だ。

 また、それぞれの観光地について、会議開催を禁止するのは、「開発ガイドラインで定められた核心風景区」と細かく指定された。
   また、地方の党組織や政府機関については、該当する行政区画内で会議を開催するよう定められた。
  観光、宗教、林業、地震、気象、生態保護、国土資源、観光地開発ガイドライン作成などの専門的会議が、上記21カ所の観光地で会議を開催する必要がある場合には、共産党及び政府の上級部門の許可が必要とした。

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 ◆解説◆
  中国ではかつて、共産党組織や政府機関、各種組織が、「観光地で会議を開催」ということが、普通に行われていた。経済が発達していなかった時代に、人々の収入は低く、組織幹部とはいえ「自腹」で旅行に出かけるのは難しかった。
 そのため「物見遊山」を兼ねた会議開催には、「福利厚生の一環」という面もあった。
 「伝統的社会主義」の体制だったころの中国では、各職場が福利厚生を積極的に行っていた。
 肉や卵、野菜、果物などの職員向け臨時配給もしばしばあった。
 住宅も職場が建設し、従業員に「ただ同然」の家賃で住まわせることがが一般的だった。

 一方で、当時の物価と比べても給与水準は極めて低かった。
 しかし、改革開放とともに「職場の福利厚生」は次々に圧縮されていった。
 給与水準を引き上げると同時に「現物支給」は少なくなっていった。
 「持ち家政策」により、工場の独身寮などを除き、「従業員向け住宅」は居住を希望する人に払い下げられていった。
  必要もないのにわざわざ観光地で開催される会議は、単なる既得権益と化した。
 「有名な場所で開催された重要会議に参加できた」ということが、一種のステイタス、つまり「面子(メンツ)」につながったと言う側面もあった。
  現在の中国で、中流程度の所得を得ている人ならば、「自腹」で観光地を訪れることは珍しくない。多くの人でにぎわう有名観光地で「仕事のため」と称して、共産党や政府組織が大人数が集まる会議を開けば、「特権を利用」との批判を浴びることになる。
 中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁が出した通達も、禁止の理由として「党と政府のイメージを損ねる」ことを挙げた。



サーチナニュース 2014-10-20 09:57
http://news.searchina.net/id/1546339?page=1

中国メディア
「絶対的権力は絶対的に腐敗する」
・・・鉄道部汚職で解説記事

 中国青年報は20日付で、中国政府の旧鉄道部の汚職事件を分析する記事を掲載した。
  記事見出しは
 「牛の囲いで猫を閉じ込めることはできない」で、
 「悪質な腐敗を防止するにはきめ細かな対策が必要」
の意だ。
 中国新聞社、国際在線など多くのメディアが同記事を転載したが、中国青年報が記事本文中で使った
 「絶対的権力は絶対的な腐敗に至る」
を見出しにした場合が多い。

 記事は冒頭部分で鉄道部運輸局だった張曙光被告が17日、収賄の罪で執行猶予2年付きの死刑判決を言い渡されたことなどを紹介。
 さらに2013年に、行政分野を担当する国家鉄路局と建設や輸送などの事業を行う国有企業の中国鉄路総公司に解体されるまで、鉄道部は行政と企業活動を一手に担ってきたと指摘。
 権力の集中が腐敗の温床になったと分析した。
  記事は、旧鉄道部首脳に蔓延していた腐敗が
 「社会に警告する」こととして
 「政治と企業が分離せず、権力が高度に集中してコントロールを失った。
 牛の囲いで猫を閉じ込めることはできない。絶対的な権力は絶対的な腐敗に至る」と論じた。  中国青年報は本文中の「牛の囲いで猫を閉じ込めることはできない」
の部分を見出しとした。

 しかし、同記事を転載した中国新聞社、中国国際放送系の国際在線、中国人民ラジオ系の中国広播網などは
「絶対的な権力は絶対的な腐敗に至る」
を見出しとした。 
 中国青年報の論調は、「行政と市場」の分離を進める現政権の方針と矛盾するものではない。
 しかし中国では、メディアなどが直接批判することはないものの、習近平国家主席が
 「自らに権力を集中させすぎている」と懸念する人も増えているとされる。
 「絶対的な権力は絶対的な腐敗に至る」の言い回しに、
 現政権に対する疑問視や批判の意図
が込められている可能性も否定できない。 

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◆解説◆
   中国は周知のように、「共産党」が支配する国だ。
 憲法にも「中国共産党が中国の各民族人民を指導」と明記されている。
 つまり、共産党は立法、行政、司法の三権の上に存在し、「絶対的権力」を掌握していることになる。  
 中国共産党も、過去に行ったことや現状がすべて「正しかった/問題ない」と主張しているわけではない。
 例えば、文化大革命については
 「毛沢東同志が晩年に犯した過ち」と総括している。
 腐敗現象についても、かなり前から「執政能力(政権担当能力)にかかわる問題」などと危機感を示している。

  しかし、さまざまな問題について共産党は常に「解決する強い意志も能力も持っている」と主張。
 つまり、問題が発生しても「自浄能力」で対応できるとの姿勢を堅持している。
 「共産党性善説」と言ってよい。
   この点、三権分立で権力が互いに監視したり牽制しあうシステムを構築している西側諸国とは考え方が大きく異なる。
 西側諸国では主要な行政官も普通選挙で選ばれる。
 「考え方や能力、道徳面が至らない者が権力の座を目指す場合がある」との前提で排除するシステムだ。
 つまり「権力性悪説」にもとづいて、国のシステムが構築されていると言ってよい。
  このような西側制度の「権力性悪説」の土台にあるのが
 「絶対的権力は絶対的な腐敗に至る」だ。
  「絶対的権力は絶対的な腐敗に至る」は中国にとって、共産党の支配体制を否定することにつながりかねない、“危険思想”とも言える。
 中国メディアがどこまで考えてこの言い回しを使ったのかは不明だが、
 「権力集中」への批判を込めた論調が、多くの人の目にさらされることになった。




【描けない未来:中国の苦悩】





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