2014年12月31日水曜日

中国においては「スピード」と「効率」がすべての価値:民主主義はスピードや効率が格段と落ちる

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JB Press 2014.12.30(火)  姫田 小夏
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42563

中国を変えられなかった幻のプロジェクト、
農民参加型の村づくり民主的プロセスを省いた発展は健全なのか

9月末に香港で始まった「雨傘革命」に終止符が打たれた。

 香港の学生たちは「中国共産党の息のかかった人物が行政長官となる選挙プロセスは民主的でない」として身を賭して闘った。
 しかし街頭占拠活動「占中」(オキュパイ・セントラル)は、12月15日に最後の拠点が撤去され、完全に収束した。

 「それ見たことか」と笑ったのは、中国大陸の同胞たちだ。
 もともと、中国人は香港の学生を見下している。
 今回の学生たちの活動に対しても「幼稚だ」「バカだ」と野次を飛ばし、嘲笑していた。

★.「軍事面や財政面で大陸がさまざまなサポートをしているにもかかわらず、『民主化要求』はないだろう。
 このサポートがなくなれば、香港は瞬く間に沈没する。それが分からないのか」(40代、上海市在勤の公務員)
★.「香港に富をもたらしたのは中国からの旅行客だ。
 大陸からたくさんの富を得ているにもかかわらず、それに背を向けるのは馬鹿げている」(30代、江蘇省在勤の会社員)

 中国人が示す「占中」への反応は、たいてい上記のようなものである。
 中国の後ろ盾で富を得、安定しているにもかかわらず、中国に反旗を翻す香港の学生を「子どもだ」と決めつける。

 「占中」という行為が世界の投資家にネガティブな影響を与えたとする見方もある。
 「香港への投資は大陸にシフトし、香港はますますその地位を低下させるだろう」
とも見ている。

 しかも
★.中国人からすれば、民主化要求など金銭的価値のないことになぜ必死になるのかが理解できない。
 そんなことをするより
 中国共産党という長いものに巻かれていれば安泰
ではないか、というのが彼らの論理だ。

■アフリカもだんだんと中国化

 中国共産党は最近「民主主義では飯が食えない」ことを訴えつつある。
 そして、この価値観は新興国にも移植されようとしている。
 アフリカ諸国もその対象である。
 価値観の移植は「研修」を通して行われる。
 中国は毎年、中国各地で「アフリカンエリート」の研修を行い、農業や医療、公衆衛生などに携わる各省の官僚、軍人、大学管理職など国の中枢を担う人材を集め、大学での講義やワークショップに参加させている。
 10年も経たてばアフリカ全土のエリートが中国流に染まっていることだろう。

 そのレクチャーで刷り込まれるのは、改革開放政策を経て世界第2位の経済大国となった中国の輝かしい成功談だ。
 昨年、研修に参加したアフリカ人男性はこう語っていた。
 「研修では『デモクラシーはいらない、国民には富さえ与えればいい』と教えられた」

 この男性は、当時は“洗脳活動”を一笑に付すかのように冷めた目で見ていた。
 ところが、徐々にその態度を変えてきている。
 最近、送られてきたメールには「中国と組むことの重要性」が縷々綴られていた。それは以下のような内容だった。

 <自力で経済発展の青写真を描けないアフリカ諸国にとって、パートナーは不可欠だ。
 しかし西側先進国は、かつてアフリカを植民地支配した敵対する相手である。
 いまだに信頼することはできない。
 西側先進国が主導する援助もあるが「民主化せよ」「腐敗をなくせ」など、あれこれと条件をつけてくる。
 経済発展と民主化を同時に速やかに推し進めるのは容易ではない。

 一方、中国はスピーディーだ。
 過去30年の急成長がそれを証明している。
 西側先進国は弱体化する今、それに代わって世界に台頭するのが中国であることは明白だ。
 中国とタッグを組まずしてどこと組めばいいというのか──。>

■かつて行われた「農民参加型の村づくり」プロジェクト

 中国は専制政治による強烈なトップダウンのもとで急激な発展を実現させた。
 それは「人類史上、最速の事例」とまで言われる。
 インフラ開発における中国流の開発独裁も「民主主義下では実現不能」との声がある。

 「民主主義国家」の日本では、たかだか数十メートルの高速道路を建設するのにも何十年という時間がかかる。
 それを思えば中国のインフラ開発は大変効率がいい。
 新興国はこの高速発展モデルに注目している。

 実は中国でも、民主的プロセスを踏む「息の長い開発」の実験はあった。
 1990年代に江西省のある村で行われた「参加型の村づくり」の試みである。

 地方政府がすべての利害関係者との対話を繰り返し、互いの認識を合致させ、農村地区における持続可能な土地利用計画の実施を目指すというものだった。
 実験はドイツの協力を得て行われた。
 資料には詳細が書かれていないが、ドイツによる対中ODAプロジェクトだったのだろうと思われる。
 これは当時の中国にとって画期的なプロジェクトだった。
 中国では中央政府が国土利用計画を決定し、地方政府が利用目標を設定するという「上から下」へのトップダウンが基本である。
 下の意見を聞いて上が動くなどというやり方は、ほとんどあり得ない。

 この「農民参加型」のプロジェクトは、まず土地利用の現状はどうなっているか、地元住民はどんな改善を望んでいるか、どうやって改善したらいいかなどを農民にヒアリングすることから始まった。

 プロジェクトに関わった中国人の学者の1人、Y氏は次のように回想する。
 「農民は外から来た見ず知らずのスタッフ(中国・ドイツの混合部隊)に自分の意見を言うなど、それまでの日常には考えられないことだったので、最初はとても当惑していた。
 ところが日が経つにつれて少しずつこの計画の意義を理解し、意見を述べるようになった。
 やがて農民は社区や地方政府の役人と積極的にコミュニケーションを図り、自分たちの要望を反映させるために行政部門にも頻繁に足を運ぶようになった。

 役人もまた農民と意見を交わすことの重要性を理解するようになった。
 『上意下達』の強制執行が当たり前だった役人にとって、農民と対等の目線で関わることは初めての経験だった」

 農民参加型の村作りは96年に江西省のいくつかの県で始まり、99年にその第1段階の工程を終えた。
 実験には官と民のそれぞれの側で人材を育成するという狙いもあり、一定の成果を上げることができた。

 しかし、大きな問題となったのは「膨大な時間」と「高額なコスト」だった。
 参加型の村作りは、役人と農民の両方に対する教育を必要とし、両者の対話は想像以上に面倒で時間がかかるものだった。
 結局、「コストと時間がかかり過ぎることが原因で、中国各地に普及するには至らなかった」(Y氏)

 やはり、中国においては「スピード」と「効率」がすべてに勝る価値だったのである。

■民主的プロセスが生み出すもの

 このプロジェクトの失敗からも分かるように、中国で民主的なプロセスを実践するのは極めて難しいと言える。

 だが、上記プロジェクトには後日談があった。

 「プロジェクトに関わった役人たちは、その後、散り散りになり別の土地に転勤して行った。
 彼らはその土地で、プロジェクトで得た知識とノウハウを村づくりに生かそうとした。
 農民も自信をつけた。
 プロジェクトで得た体験は無駄になはならなかったのだ」(Y氏)

 民主主義を選択すれば、スピードや効率は確かに落ちる。
 だが、対話のない発展が健全なものと言えるのだろういか。
 また、民主的プロセスが、人のやる気と自信を呼び起こすことも確かだ。
 もどかしくじれったいプロセスだが、私たちは民主主義こそが平和と安定をもたらすのだと信じたい。



FOCUS-ASIA.COM 2月11日(水)9時52分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150211-00000014-xinhua-cn

「アフリカで反中感情高まる」と現地紙報道、
中国人が腐敗を助長しているの声も―中国紙

 中国紙・環球時報は10日、南アフリカ紙メール・アンド・ガーディアンの報道として、アフリカの一部の国で反中感情が高まり、中国系企業や中国人を襲撃する事件も起きていると報じた。

★.過去20年でアフリカに移住した中国人は100万人を超える
とも言われている。’
 環球時報は一方で、
★.米国では1990年から2013年にかけて約220万人の中国人が滞在し、
★.フランスでは09年時点で40万人、
★.日本には60万人が滞在している
とのデータを紹介。 
 また、
★.中国在住のアフリカ人もこの10年で20万人に達している点にも言及した。

 このことからみて、アフリカに大量の中国人が押し寄せているという見方は客観的ではなく、一部のアフリカメディアによる
 「その数はすでに脅威のレベルに達している」
と思わせるような誇張的な表現は扇動的だと論じている。

 環球時報はまた、中国の対アフリカ政策がアフリカ諸国の腐敗を助長しているとする一部の声が主に西側から上がっているが、自分たちが専制政権の支持や貿易関係でアフリカ諸国に与えているネガティブな影響については一切触れないと批判。
 こうした中国に対するマイナスイメージの形成に対し、早急に対応しなければ、さらに多くの文化的衝突が発生することになると懸念を示している。





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